先進的英語教育

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“CLIL(教科・科目と言語を統合した学習)、
学生と教師双方が動機付けられる授業”のご紹介

授業のご紹介
2018/11/26

東洋英和女学院大学国際社会学部国際コミュニケーション学科教授・笹島茂先生の授業を見学してきました。

*東洋英和女学院大学 1884年カナダ・メソジスト教会派遣の婦人宣教師マーサ・J・カートメルによって、東京・麻布鳥居坂下に「東洋英和女学校」として設立。敬神奉仕をモットーとする。1989年横浜校地に大学開設。2014年学院創立130周年、大学開学25周年。


笹島先生が日頃教鞭を取られている英語学概論の授業では、*CLIL(Content and Language Integrated Learning)のノウハウを活用しています。CLILが盛んな欧州では、教科・科目の内容と外国語を効率的に学べるため、欧州委員会が積極的に推進しその有効性が実証されてきました。笹島先生は、CLILを実施する際のキーとなる“4つのC”をバランスよく取り入れることを授業の度に実行されています。

第一にContent(講義内容)。今回拝見した授業の題材は、「赤毛のアン」のオールイングリッシュ映画です。赤毛のアンを日本で最初に翻訳したのは東洋英和女学院大学卒業の村岡花子さんということもあり、生徒は興味深く映画を見たようです。生徒の関心を惹きつける題材を選ぶこともとても大事なのです。
第二にCommunication(英語を使ったやりとり)。授業では生徒全員が映画を見た感想を英語でプレゼンテーションし、質疑応答も英語で行われました。主人公のアンが非常にtalkative(おしゃべり)であることから、映画のセリフを聞くことにより多くの表現を自然に吸収できること。アンの強い個性は、生徒の受け取り方に好き嫌いの違いがはっきり分かれ、活発な質疑応答に繋がっていました。
第三にCognition(認知・理解・思考)。口語英語の表現、英文法と日本語の組み立てとの違いを生徒は映画を通じて認識し、英日対照させながら理解を深めます。同時に登場人物の心情を読み取りながら思考が深まる側面もありました。
第四にCulture(文化・特に文化間理解)。プリンスエドワード島での生活の様子は生徒の文化への関心を大いに高め、アンと自分自身の文化を相互に比較しながら内容を考えたようです。

このように“4つのC”を効果的に取り入れたことにより、生徒の積極的な授業参加と同時に、指導される笹島先生も大いにモティベーションが高まったと改めて実感されていました。東洋英和女学院大学の英語授業は少人数クラスが基本であり、進度別に異なった到達目標を設定する緻密さです。少人数の利点を活かし英語教育の基本である発音・語彙指導が丁寧にでき、第二言語習得理論のメソッドも取り入れられ、更にCLILと相俟って“英語の東洋英和”の称名に相応しい授業内容であることが垣間見えました。
英語力の評価は、欧州評議会が設定した欧州共通言語参照枠=CEFRをベースに生徒が自分で行い、世界標準の英語力を身に付ける体制が整っています。これらの充実した英語教育により、多くの生徒が世界11カ国19校もある海外提携校などへ海外留学を志向することに繋がっていると理解できました。笹島先生の最終目標は、授業で動機づけられた生徒が関心分野を自ら積極的に学び、且つ理解を深めていくLEARNER AUTONOMY(学習者の自律)の実現とのことです。