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山形県の公立中高一貫校のCLIL授業のご紹介

イベント
2019/07/23

山形県東根市にある山形県立東桜学館(とうおうがっかん)中学校・高等学校のCLIL授業を取材してきました。

【山形県立東桜学館中学校・高等学校について】
母体は明治37年に開校した私立楯岡女学会である。平成28年、県内初の併設型中高一貫校となる山形県立東桜学館中学校・高等学校として開校。翌年にはSSHの指定を受ける。ICT機器を活用した探求型学習を全校で取り組み、理数教育と外国語教育の充実に力を入れており、特に中学校での英語授業は標準より33%時間多く確保し、4技能をバランス良く学ぶ実践的な取り組みを行っている。


授業は、CLIL指導を同校に導入した英語科主任山口和彦先生が、高校2年生を対象に地理・公民内容をオールイングリッシュで行いました。教科書ではニューヨークで廃線となった高架線路を公園に再利用したケースを学び、生徒が身近なこととして課題を考えられるよう国内のclosed school(廃校)をテーマとしていました。廃校を水族館にした室戸廃校水族館などの事業に焦点を当てたことにより、生徒の関心が自然に高まった様子です。更に、全国で廃校数の多い都道府県ランキングという統計実数を示すことにより生徒が思考(cognition)を深め、データの裏付けによる科学的探究学習を行う工夫も見られます。

CLILが掲げる『4C』のうち、Communication(言語)については重要事項を正確な英語発音でしっかりinputする時間が取られていました。生徒が間違えやすい発音について、例えば“aquarium”という語のネイティブ発音を先生が模範で示した後、生徒が繰り返すことにより定着を図る仕組みです。また文法事項についてもFocus on Form(注)の手法を取り入れ、活きた会話の中で正確な文法事項や意図が正しく伝わる英語表現を確認する丁寧さがありました。特に山口先生が熱心に指導されていたのは長文にスラッシュを入れることです。これにより意味の固まりで正確に区切る練習ができ、意味の認識強化とともに正確な英語発声の区切りを自然にできる効果も見込めます。通常の授業では最初から、ある程度意味の区切りで改行されたワークシートやスライドによる phrase readingを行っています。そうした活動がベースにあったので、生徒同士が頻繁にメンバーを交替して行うペアワークにおいても、緊張感を持ちながらも流暢な英語でコミュニケーションを取る生徒の姿がみられました。全員の生徒が集中して50分間授業に参加する優れたCommunity(協同)が形成されており、日頃から同校では授業を活性化する様々な工夫がなされていることを感じました。身近なContent(科目内容)により生徒の興味関心を高めつつ思考を深め、数々の効果的英語習得法を実践する極めて内容の濃いCLIL授業という印象でした。授業用のスライドは同じ科目を担当する先生方で共有されており、同じ内容を後藤由紀子先生も実践されているそうです。

取材後の授業では、統計資料を見ながら日本における廃校の現状と室戸廃校水族館を英語で紹介する訓練を行い、最終タスクは近隣の廃校をどう再利用するかを含んだスキットをペアで発表するところまでいったと聞きました。ペアを組んでの大きな発表活動は今回が初めてとのことですが、全ての生徒が積極的に英語でやり取りをしており、授業中にアウトプットを意識してインプットをしている習慣になっていることが覗えました。身近なテーマをとり上げることにより生徒が自分の意見を持ち易いなどの工夫もあり、全体的に内容の濃いコミュニケーションを、しかも正確な英語発音でできていたのは驚きです。

CLIL、Focus on Form、英語スピーク・アウト、幾つものノウハウが融合した同校オリジナル授業により、生徒が着実に英語力・思考力を伸ばしていることを実感しました。END

(注)Focus on Form…語彙・文法など言語の形式(form)に意識を焦点化する(focus)ことにより、学習者が英語を使う時どのように語句や表現を使えば意図することが伝わるのか、体験して理解するプロセス。

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