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兵庫県の私立中高一貫校での多教科CLIL授業のご紹介

授業のご紹介
2019/05/29

兵庫県宝塚市、雲雀丘(ひばりがおか)学園中学校・高等学校の多教科CLIL授業を取材してきました。
 
雲雀丘学園が創立した昭和25年当時、宝塚市雲雀丘には小・中学校は無く地元の熱望を受けて開校した。初代理事長鳥井信治郎は「親孝行な人はどんなことでも立派にできる」と説き、このことから同校の基本理念「孝道」「親孝行」が生まれ、人間教育と学力向上を両立する伝統が脈々と現在まで受け継がれている。充実したICT教育に加え、グローバル人材育成のため教科内容を英語で学ぶCLIL授業を多教科で実施するなど先進的な教育に特長がある。


グローバル教育部長・高砂千聡先生に、同校がCLILを導入した経緯・目的、授業で工夫されている点などをお伺いしました。高砂先生は上智大学で行われた研修に参加し、かねてから興味を持っていたこの教授法を体験。以来、CLILは生徒にとっても教師にとっても有意義で面白いとの思いからCLILを勉強し、2017年に同校で行われた第1回授業研究大会では中学3年生に理科のテーマでCLIL授業を実践されました。その後2018年、同校に新分掌としてグローバル教育部ができた際に、CLILはまさにグローバル教育そのものであるということから、主要なグローバルプログラムの一つとして本格的に学校として取り組むことになりました。2018年度は上智大学池田教授の指導を受けながら、中・高6学年で教科担当の先生と英語の先生のTT(Team Teaching)で教えるというスタイルにより、14種類もの内容でCLIL授業を行うという、全国でも例のない広範なCLILの取り組みを行っています。
教材は、生徒の関心を高めるためAUTHENTIC素材等を集めた上で、全て学校オリジナルのものを自作・使用しています。生徒は授業の度にアンケート・REFLECTION SHEETへ感想や学んだことを記載していますが、全体的に教科を英語で学ぶことを楽しんでいる様子が窺えるとのことです。CLILの4つのC(Content,Communication,Cognition,Culture)をバランスよく採り入れることにより英語力強化に加え、主体的・対話的で深い学びが自然に実現できる成果もあったようです。
同校では日々授業改善の努力をされており、CLIL授業では教科の垣根を越えた先生たちの協力が不可欠ですが、「CLIL推進委員会」のメンバーを中心に情報交換や異なる教科の先生との連携を高める工夫もあります。2019年度は新たな試みとして、中学3年生~高校2年生を対象に年間テーマを設定して複数の教科で同じテーマに基づくCLIL授業を行う予定とのことで、益々進化したCLIL授業が期待できそうです。

数学科の三村麻梨乃先生には数学CLIL授業の実施状況をお聞きしました。CLILを導入する前から三村先生は生徒全員が数学内容の理解をすることに重点を置き、必要に応じ休み時間に小テストを実施されてきました。すると生徒同士が自然発生的にペアやグループで教え合うカルチャーができあがったようです。この下地があったことからCLIL実施後も数学授業の中でペアワークやグループワークが無理なく行われ、全体として数学理解を深められることに繋がっているとのことです。英語が得意な生徒だけではなく、全員が必ず参加できるような伝言ゲームを採り入れたり、現実の海外の交通規則を題材として関数の問題を解くなど、生徒が関心を持ち易いようにする様々な工夫をされています。三村先生の授業では英語と日本語を混ぜて使いますが、日本語は関西弁オンリーです。これにより、ともすると硬くなりがちな数学授業の雰囲気を和らげておられます。お聞きする程に三村先生が、全ての生徒のことを親身に思い工夫を重ねていらっしゃることがよく理解できました。