東京都世田谷区の鷗友学園女子中学高等学校の地理総合*CLIL授業のご紹介
【鷗友学園女子中学高等学校高等学校について】
鷗友学園女子中学高等学校は1935年の創立以来、キリスト教の精神を基盤に「慈愛と誠実と創造」を校訓として心の教育を行っている。定評あるグローバル教育は授業・ホームルーム活動・国際理解教育プログラムの3つの柱で成り立っている。国際理解教育プログラムは全て希望者対象となっているが、これは生徒自らが選び挑戦することで、自分の枠を超え世界にはばたくことができるという点を考慮してのものである。英語教育では学校内にある約3万冊の洋書を活用して、中学3年間で100万語以上英文を読むことを目標とする「多読」を採り入れている。中学3年時には英語学習の集大成として1人1冊オリジナル絵本を作成する。高校では多読で身につけた高い読解力や発信力を基にハイレベルなディベートやスピーチを行っている。特筆すべき取り組みとして、社会科などの他教科教員と英語科教員とが連携して教科内容理解と英語習得の両面に焦点をあてる、CLIL授業が挙げられる。
*CLILとはContent and Language Integrated Learningの略称で、内容言語統合型学習と訳されている。ここ数年で、全国の小学校から大学まで実施校が増えている。
高校1年生で防災をテーマに行った、地理総合のCLIL授業は、社会科の中村先生による東日本震災発生時の体験談から始まりました。

交通手段がマヒして数百名が1晩を学校内で過ごすことになり、大きな揺れの余震が続いたためよく眠れなかったこと、携帯電話がつながらず、公衆電話を探して保護者と連絡を取ったことなど、緊迫感のあるお話でした。生徒は「学校のオブジェは壊れませんでしたか?」など活発に質問して、中村先生からは校舎のガラスを耐震タイプにするなど学校の震災後に行った防災対策を説明しました。そして、生徒は防災が身近で重要な問題であることを認識していました。
また、社会科の吉田先生が明快な英語を駆使して、実際の世田谷区ハザードマップを用いたタスクを行いました。災害時は正しい情報を把握することが大切であること、日本とアメリカでは震度階級が異なることなどに注意して相手に伝わり易い表現にすること、などのポイントを解説しました。

次に、英語科の帯屋先生がパニックになった外国人留学生役、社会科の久枝先生が日本人生徒役になり、地震が起きた場合を想定したデモンストレーションを英語で行いました。

続く生徒のペアワークでは、配付されたワークシートに基づき、① Danger we may face (我々が直面するかもしれない危険) ② The route to the shelter(避難所への経路) ③ How long it takes to arrive at the shelter(避難所までの所要時間)の3点を整理して話し合いました。生徒は、世田谷区ハザードマップから学校周辺には暗渠があることやや、避難場所までに徒歩でどれぐらいの時間がかかるのか、など災害を適切に理解するための知識を英語と共に習得していました。
英語を具体的なやり取りの中で習得するための足場掛けとして、学習済みの助動詞であるcan, may, should, mustの順に、説明の中で使用した場合に相手への強制度が高まるということを帯屋先生が確認しました。
授業後半では、ドバイから授業視察に来られた外国人の方と英語で質疑応答を行い、ドバイには地震が無いということを現地の方から直接確認できる一幕もありました。最後に授業で得られたことの振り返りを行い、学んだ知識と思考したことを生徒はしっかり整理していました。
「防災」という地理総合で重要な単元、かつ自分事として興味を持ちやすいテーマを選び、英語習得の足場掛けや異文化理解のための時間もあり、準備から実行まで先生方が多くの配慮をされたことを感じ取りました。合科(教科間連携)を伝統的に行っている同校でのCLIL授業が今後も生徒の成長に寄与していくことが期待できました。
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